遺言内容の検討方法

生前対策メモ ー 遺言内容の検討方法  

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遺言内容の検討(6つの観点)

遺言内容を検討する場合には、以下の観点から整理・検討することをお勧めします。

遺言内容の検討

  1. 「家族関係(推定相続人)および受遺者」の観点
  2. 「財産内容」の観点
  3. 「ご本人の思い」の観点
  4. 「財産の分配方法」の観点
  5. 「状況変化への対応」の観点
  6. 「死後事務委任」の観点

1. 「家族関係(推定相続人)および受遺者」の観点

家族関係(推定相続人)

配偶者、子、親、兄弟姉妹を戸籍等により確認し、推定相続人を確定します。なお、本人の死亡により相続人が確定しますので、遺言作成時点では“推定”相続人となります。

遺言作成後の本人死亡前(又は同時)に推定相続人が死亡した場合には、その方は相続人ではなくなりますので、当初想定していた相続人の構成とは異なります。

推定相続人の中で判断能力に問題のある方の把握(対応)の他、遺言による認知、相続欠格、推定相続人の廃除・廃除の取消し等も考慮に入れる必要があります。

受遺者

相続人以外に財産を渡す遺贈の場合には、事前に受遺者(遺贈を受ける方)の氏名・生年月日・住所の情報を入手します

また、法定相続人が一人もいない場合には、遺言により特別縁故者に財産を残すことができます(民法958の3)。なお、遺言がない場合には、国庫に帰属することになります(民法959)。

 

2. 「財産内容」の観点

不動産、預貯金、有価証券、その他の資産、債務などの洗い出しを行います。
詳細は、相続手続きメモの「相続財産の調査・確定」をご覧ください。

 

3. 「ご本人の思い」の観点

遺言は、亡くなった後に本人の意思を最も効果的に伝える手法で、法的拘束力を持ちます。
ご本人の意思が全体の遺言内容の根幹になりますので、「ご本人の思い」は非常に重要な項目です

大まかな財産分配の方針

ご本人の亡き後にどのように将来を託すのかについて大まかな方針を定めます。
具体的には、現住不動産や収益不動産に関する対応、金融資産の分配、残された家族への対応、事業をされている方であれば後継ぎ問題等について検討します。遺言内容が履行されるように
遺留分に配慮します。また負担付相続・負担付遺贈についても併せて検討します。

祭祀主宰者の決定

遺言では財産の分配の他に、祭祀の承継を定めることができます(民法897条1項)。
従前では長男が承継することが多かったようですが、必ずしもそれに限られるものではありません。
また、祭祀承継者には遺言により相続財産の分配を少し手厚くすることもできます。

遺言執行者の決定

遺言では遺言執行者を定めることができます(民法1006条1項)。
遺言執行者には、相続人、受遺者の他、弁護士・司法書士等の専門家を指定できます。
遺言執行者が指定されていない場合には、原則相続人全員が関与する必要がありますので、迅速に手続きを進める上で障害になる恐れがあります。遺言を作成される場合には、遺言執行者を指定することをお勧めします。

付言事項

遺言を作成する上での根幹となる「ご本人の思い」をメッセージとして託すために重要な項目です。
付言事項自体には法的拘束力はありませんが、遺言内容に至る背景を各相続人に伝えると共に、
ご本人の亡き後に相続人間で揉めることが無いようするための最期のメッセージとして積極的に利用することをお勧めします。
また「遺言で定めることができること」以外の事項で、遺言に記載したい内容は、付言事項に記載します。

 

4. 「財産の分配方法」の観点

「ご本人の思い」に基づき、具体的な財産の分配方法を決めます。ここでは注意点のみ示します。

不動産

後続の相続における揉めごとを防止するため、共有は極力避けるようにしてください。

預貯金

遺言作成時の預金残高と死亡時の預金残高は、必ずしも同じとは限りません。
相続時に想定していた金額割合と大きく異なることもありますので、
全体の配分比率で相続させる方法も検討してください。

 

5. 「状況変化への対応」の観点

状況変化には、外的変化と内的変化の2種類があります。

推定相続人および受遺者の変化(外的変化)

遺言作成から遺言執行までの間に不幸にも推定相続人が本人より先に亡くなった場合には、当初想定していた推定相続人と異なる方が相続人となります。
また、受贈者を定めていた場合において、受贈者が本人より先に亡くなった場合には、特に定めがない限り、その遺贈は効力を有しないことになります。
このような不測の事態に対応するには、「予備的遺言」を用意しておきます。

■配偶者が自分より先に死亡したときの予備的遺言

推定相続人が配偶者Aと長男B、長女Cの場合、遺言で住居不動産を配偶者に相続させるとした上で、万が一本人より配偶者Aが先に死亡した場合に備えて、予備的遺言で住居不動産を長女Cに相続させることができます。
「万が一、遺言者より前に又は遺言者と同時に妻Aが死亡していたときは、遺言者は前条記載の財産を遺言者の長女Cに相続させる。」

■親が自分より先に死亡したときの予備的遺言

推定相続人が配偶者と親の場合、本人より先に親が亡くなれば、配偶者と本人の兄弟姉妹が相続人となります。予備的遺言により兄弟姉妹の遺留分を封じて、全財産を配偶者へ(完全に)相続させることができます。

遺言者の変化(内的変化)

ご本人の「老後の対策」に該当するものです。病気やケガ、判断能力の低下等により日々の生活に支障をきたすことを防ぐため、事前に任意後見契約・財産管理等委任契約・見守り契約を締結することを検討します。

6. 「死後事務委任」の観点

本人の死後の様々な事務的作業である葬儀、お墓、各種契約の解除などを、生前に委任しておくことができます。死後事務委任契約により、遺言では法的拘束力が無い事項でも、法的拘束力を持たせることが可能になります。
スマホやパソコン等のデジタル遺品の扱いについても検討します。

 


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