相続人の調査・確定– 相続手続メモ(2) –

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相続の開始

相続は、被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。
相続人となるには、被相続人の死亡の時点で、相続人が生きていること(権利能力を有していること)が必要です。

相続人とは

具体的な相続人は、配偶者と血族相続人(血縁のある親族)になります。
まず、配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。配偶者がいなければ、相続人は血族相続人だけとなります。

血族相続人は、次の順位で相続します(民法887, 889条) 。
第1順位 直系卑属(子、孫等)
第2順位 直系尊属(父母、祖父母等)
第3順位 兄弟姉妹

先順位の相続人が一人でもいれば、後順位の血族は相続人になりません。
例えば、子がいない夫が死亡した場合、相続人となるのは妻と夫の親です。夫の兄弟姉妹は相続人にはなりません。もっとも、夫の親が共に相続放棄をしたような場合は、兄弟姉妹が血族相続人として相続することになります。

血族相続人(第1順位) ー 直系卑属

胎児は、相続においては、すでに生まれたものとみなされます(民法886条1項)。配偶者との間の子の他に、先妻との間の子、認知をした子も対象となります。
また、子がすでに死亡している場合は、その子の子(被相続人の孫)が代襲相続します(民法887条2項)。

血族相続人(第2順位) ー 直系尊属

第1順位の血族相続人がいない(子や孫がいない)場合に、相続人となります。
父も母もすでに死亡している場合は、祖父母が代襲相続します(民法889条1項) 。

血族相続人(第3順位) ー 兄弟姉妹

第1順位及び第2順位の血族相続人がいない場合に、相続人となります。
兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その兄弟姉妹の子(甥や姪)が代襲相続します(民法889条1項)。

代襲相続

被相続人の相続開始以前にすでに死亡している場合や、相続欠格や廃除によって相続人資格を失っている場合に、その子が代わりに相続をするという仕組みです。

第1順位(子)の代襲は、直系卑属がいる限り、代襲・再代襲が認められます(民法887条3項)。よって、孫に限らず、ひ孫、玄孫等が相続人となることもあり得ます。

一方、第3順位(兄弟姉妹)の代襲は、再代襲が認められていません(民法889条2項)。よって、甥や姪が相続人になることはあっても、その甥や姪の子が相続人になることはありません。

相続欠格

一定の場合には、相続人となるべき者が相続人資格を失うことが規定されています(民法891条)。
下記のいずれかに該当する場合、被相続人の意思に関わらず(当然に)相続人資格を失うことになります。
①故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

推定相続人の廃除

以下のいずれかに該当する場合には、被相続人は、遺留分を有する推定相続人の廃除を、家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。
①被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき
②推定相続人にその他の著しい非行があったとき

相続欠格と異なり、当然に廃除される訳ではなく、被相続人の意思により推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できるというものです。
被相続人の意思が重視されるので、被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法894条)。

また、廃除の対象となるのは、遺留分を有する相続人、すなわち配偶者、第1順位及び第2順位の血族相続人です。第3順位の兄弟姉妹は含まれません。兄弟姉妹を相続対象から実質的に外すには、遺言で足りると考えられているためです。 

相続放棄

相続放棄は、被相続人の相続の効果が生ずることを遮断するもので、相続放棄をする旨を家庭裁判所に申述する必要があります(民法938条)。
相続放棄が認められると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)

相続人の調査・確定の手順

相続手続きに必要な戸籍謄本等

不動産の名義変更等の相続手続きをする際には、
・被相続人の出生から死亡までの経過が分かる全ての戸籍(除籍)謄本
・相続人の戸籍謄抄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)
が必要となります。
なお、法定相続情報証明制度を利用している場合は、
・法定相続情報一覧図の写し
で代用することができます。

戸籍謄本等の取得

戸籍謄本等は、本籍地の市区町村役所より入手します(郵送でも可能)。

まず出生により親の戸籍に入りますが、結婚すると親の戸籍から除かれ(除籍)、新規に夫婦の戸籍が作られます(就籍)。本籍地を異なる市区町村に変えると、移した先の市区町村で新しい戸籍が作られます(転籍)。
また、法改正等により新様式の戸籍に変更されることがあります(改製)。

新戸籍がつくられると、元の戸籍の記載事項の内、一定の事項が移し替えられるため、現在の戸籍からさかのぼって出生時の戸籍まで入手する必要があります。
相続手続きで必要な戸籍謄本は、時系列でつながっている必要がありますので、細心の注意が必要です。

相続関係説明図の作成

入手した戸籍謄本等より、相続関係説明図を作成します。
不動産の名義変更(相続登記)の場合、相続関係説明図を添付することにより、提供した戸籍謄本等を原本還付してもらうことができます。

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