MENU

不動産相続の名義を決定する際に知っておきたい7つのケース

相続対象財産に不動産がある場合、相続登記により名義変更を行う必要がありますが、具体的に対象不動産の名義を誰の名義にするのかを決定する際に迷う場面が多いように思われます。
ここでは、被相続人の相続人が母・長男・長女の親子3名の場合を想定し、不動産相続の名義を決定するケースを7つに分類して解説します。

前提条件と7つのケース一覧

前提条件

ここでは、下記のとおりに仮定し、不動産相続の名義を決定する際のケースを検討します。

  • 相続人は、配偶者(母)・長男・長女の3名である
  • 法定相続分は、母:4分の2、長男:4分の1、長女4分の1
  • 被相続人には遺言や家族信託は無い
  • 相続人で相続放棄をする者はいない
  • 相続財産として不動産1筆(土地または建物)に限定して検討する
前提条件

ケース一覧

代表的なケースを分類すると、以下の7つになります。各ケースごとにメリットとデメリットを説明しています。
不動産相続の名義や配分(持分)の判断としては住居としている相続人の意向、将来(近い将来と遠い将来)の可能性、2次相続・相続税問題など多様ですので、本ケースは検討用の一事例としてご参考にしてください。

なお、代償分割の場合や相続税が発生する場合などの複雑な事例の詳細は含まれていませんので、判断に迷う場合には専門家(司法書士、税理士等)にご相談ください。

相続登記支援サービス
相続登記支援サービス

【Case 1】法定相続分どおりの共有名義にする

このケースは、相続人全員で法定相続人どおりの配分(持分)で共有名義とする場合です。
本事例では、母(4分の2)、長男(4分の1)、長女(4分の1)の共有名義となります。

不動産相続の名義:Case1

メリット

  • 公平感があり、話し合いでまとまりやすい
  • 相続登記手続きの際に、遺産分割協議書の提出が不要

デメリット

  • 毎年の不動産固定資産税の支払いについてトラブルになる恐れがある
  • 将来的に売却する際には全員の同意が必要になる
  • 例えば母が認知症等で判断能力が衰えた場合は、上記の意思表示が難しくなる

【Case 2】配偶者(母)の単独名義にする

このケースは、配偶者(母)の単独名義とする場合です。

不動産相続の名義:Case2

メリット

  • 母が管理・処分を一人で決められる(居住権も完全に確保される)
  • 子供が他に住居を構えている場合、現状を反映した形で分かりやすい

デメリット

  • 母が高齢の場合、将来的な施設への入居等を見据えると管理面で不安がある
  • 状況によっては、将来の二次相続(母が亡くなった際の相続)で子供たちへの相続税負担が重くなる可能性がある

【Case 3】子供1名の単独名義にする

このケースは、子供1名の単独名義とする場合です。

不動産相続の名義:Case3

メリット

  • 不動産の権利関係がシンプルで、将来の管理や処分が容易になる
  • 対象不動産に子供本人が居住する場合には最適である

デメリット

  • 他の相続人から代償金を求められる場合がある(代償分割)

【Case 4】配偶者と子供1名の共有名義にする

このケースは、配偶者と子供1名の共有名義とする場合です。

不動産相続の名義:Case4

メリット

  • 母と子供1名が同居する場合では、母の生活安定と子供の権利を両立できる

デメリット

  • 不動産は共有となるため、将来の処分には母および子供の同意が必要
  • 例えば母が認知症等で判断能力が衰えた場合は、上記の意思表示が難しくなる

【Case 5】子供2名の共有名義にする

このケースは、子供2名の共有名義とする場合です。
本事例では、長男と長女の2名で、それぞれ2分の1の持分で共有することにします。

不動産相続の名義:Case5

メリット

  • 二次相続(母が亡くなった際の相続)の手間とコストを軽減できる

デメリット

  • 当該不動産に母が住居とする場合、居住権の確保を明確にすべき場合もありうる

【Case 6】相続分の譲渡を利用する

このケースは、ある相続人が自身の相続分を、他の相続人に譲渡する場合です。
本事例では、長女が自身の相続分を長男に対して全部譲渡することにより、長男の最終的な相続分が2分の1となったとします。

不動産相続の名義:Case6

メリット

  • 特定の相続人に権利を集中させることができる
  • 相続人が遺産分割協議から脱退することができる

デメリット

  • 相続分譲渡契約の手続きが必要になる

【Case 7】換価分割にする

このケースは、対象不動産を住居として使用していないので売却を希望する場合などに選択されます。
売却にあたり、被相続人名義から直接買い手への所有権移転(名義変更)はできないので、いったん相続人名義に相続登記する必要があります。
本事例では、いったん法定相続分どおりに相続登記をして、買い手に対し売却をすることにします。

不動産相続の名義:Case7

メリット

  • 対象不動産を売却後に現金を分割するため、最も公平に分けることができる

デメリット

  • 売却に時間を要する場合がある
相続登記支援サービス
相続登記支援サービス

不動産相続の名義に関するQ&A

相続対象不動産が複数ある場合、全て同じ名義人としなければならないですか?

その必要はありません。
不動産ごとに、名義人(共有の場合は持分)を決定できます。
例えば、現在住居としている不動産はその相続人名義とし、他の不動産は売却を予定するため相続人全員の共有名義とすることができます。


相続手続・生前対策に関するご相談は初回無料で受け付けております。
ご相談のご予約・お問い合わせはこちら

この記事を書いた人

なか司法書士事務所
司法書士 中 英康
札幌市中央区(狸小路7丁目近く)の司法書士事務所で代表を務める。
一般個人向けに相続手続・生前対策・不動産登記全般、法人企業向けに経営基盤整備支援・経営者の相続支援・商業登記全般を取り扱う。