遺言書の法的性質
遺言書は、遺言者(被相続人)の意思を示したものです。
遺言が効力を生ずるのは、遺言者の死亡時(民法985条1項)となります。
遺言は法定相続に優先します。一方で、遺留分を持つ相続人は、遺言があっても自己の遺留分を主張することができます。
よって、遺言、法定相続、遺留分の関係は、
遺留分 > 遺言 > 法定相続
となります。
遺言書の確認
被相続人が遺言をしていたか否かの調査を行います。遺言があった場合には、その後の扱いに大きく影響が出ますので、大変重要な調査です。
仮に公正証書遺言を遺していたとしても、それより後の日付の自筆証書遺言があれば、自筆証書遺言の内容が優先されます。
公正証書遺言の調査
平成元年1月以降に作成された公正証書遺言は、日本公証人連合会の遺言検索システムから検索ができます。
自筆証書遺言(保管制度利用)の調査
法務局における保管制度利用の自筆証書遺言の場合、法務局に対して遺言書保管事実証明書の交付請求をして、保管の有無を確認します。
保管されている場合、続けて遺言書情報証明書の交付請求等により遺言内容を確認します。
上記以外の自筆証書遺言の調査
被相続人の自宅(金庫、机、仏壇等)や貸金庫などを調べます。
遺言書の検認手続き
公正証書遺言並びに保管制度利用の自筆証書遺言を除き、家庭裁判所で遺言の検認手続きが必要になります(民法1004条)。
家庭裁判所では、申立人、相続人等利害関係者の立ち合いの上で、遺言書を開封して検認を行います。検認が終わると、遺言書検認済みの証明書が発行されます。
検認は、証拠保全手続きに該当するため、その遺言の有効・無効を判断するものではありません。
なお、封印された遺言書を検認手続きをせずに、開封等した場合には5万円以下の過料が課されますので、注意が必要です。
遺言書と遺産分割協議
遺言書と遺産分割協議の関係は下図のとおりです。
遺言書があっても遺産分割協議が必要となる場合はありますので、注意が必要です。
遺言書がない場合
法定相続人全員で遺産分割協議が必要になります。
遺言書がある場合
財産帰属が全て確定している場合
すべての財産について個別具体的に財産の帰属が指定されている場合は、遺産分割協議は不要です。
財産帰属が全て確定していない場合
相続財産について一部でも個別具体的に財産の帰属が指定されていない場合は、その一部について遺産分割協議が必要となります。
「子Aに〇〇の土地を相続させる」
→残りの財産の帰属について遺産分割協議が必要となる。
「子Aに遺産の3分の2、子Bに遺産の3分の1を相続させる」
→相続分の指定に基づき具体的な財産の帰属を遺産分割協議で決める必要がある。
遺言内容と異なる遺産分割をしたい場合
相続人全員の同意があれば、遺言内容と異なる遺産分割を行うことは認められます。